
薔薇の名前
はじめて「薔薇の名前」を読んだのはいつだったか、どうしても思い出せない。けっこうちいさかったかも、私。大人向けの本だと分かってはいたけれど、これまで見たことのない表紙の絵と、そのタイトルのもつ響きの不思議なかんじに惹かれて親にねだって買ってもらった。 ただはじめて読んだときにも、ことばで中世の修道院の持つ陰翳をここまであざやかに表現できることにただ驚き、引き込またのだけは覚えてます。 この本のおもしろさは、何度も読み返していくたびに別の方向へ本の世界が広がることだと思います。イタリアについて、カトリックについて、中世という時代について、成長した自分のなかに新しい「知識」が蓄積されるたびに読み返す。そうすると作者が本の中に込めたまた別の世界が広がってくる。ひょっとしたら作者が意図してなかったものまで。 この小説の重要なキャストのひとりが、聖書という「本」です。聖書という本は、そのなかに書いてあるものだけではなくて、その文やことばのひとつひとつがいろんな意味を持っています。そのなかにはやっぱり、実際におおむかしに羊皮紙にむかってペンを走らせた人がまったく思い描いていなかったものも含まれていたりすると思う、たぶん。 ひとつのことばにいくつもの意味があり、その意味が他の言葉のもつ意味と組み合わさることで、ひとつの文が何通りもの意味を持つようになる。目に見える一冊の本のなかに、無限の物語が生まれる。これって、「本」のいちばんすごいところじゃないですかね。おんなじことは映画や音楽ではなかなかできない。 映画版もあるこのお話。美しい映像だけど、本の中にあった「おおくのものがたり」のうちのひとつだけしか表現しきれてないような気がする。 でも、この映画のショーン・コネリーはしぶくてかっこよすぎ…。 p.s.「薔薇の名前」の作者、ウンベルト・エーコの記事を見つけたのでメモ。 コメント(0)| Track back(0) | 2004-01-31 14:19:53 |
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