
天国の本屋 恋火
晴れ間ものぞいた夕方、買い物に新宿に出た。 無印でジンコウのお香とラベンダーのキャンドルを、マツキヨでコンタクトの洗浄剤を買ったあと、紀伊国屋書店の店先に並べられた文庫本を眺めて歩く。とくに目当ての本があったわけじゃない。折角新宿まで出てきたのだから、もう少しいたかっただけ。 そのとき、「天国の本屋 恋火」が目に留まった。 映画にもなっている短編。表紙を埋め尽くさんばかりに大きな竹内結子と玉山鉄二の写真の帯に気後れしてこれまで手にすることなかったのだけれど、時間もあることだしページを繰ってみた。 その瞬間、「ヴェルディの『椿姫』」という文字が飛び込んできて、そのままレジに向かっている自分がいた。 三越裏のセガフレードに行き、読み始める。この作者はことばの使い方が格段にうまいというわけではなかった。ストーリーも、どこかで聞いたことのあるような、先の読めるものだった。 でも、まっすぐなお話だった。 ラブストーリーに分類できるのかもしれない。でも、一概にそうとも言えない。でてくる人誰もがやさしくて、親切で、そうしたやさしさが一つ一つ結びついていくことで進んでいくお話。はたして今の世の中に、こうした人たちはどれくらい残っているのだろう。ありえない、おはなし。 主人公のピアニストくずれは、天国の本屋でバイトをする。ときには子どもにせがまれて、絵本を読む。「しろいうさぎとくろいうさぎ」のおとぎばなし。 おとぎばなしって、子ども時代を過ぎてしまうと自分に子どもができるまで読まないもの。そして子どものいない私はもう20年近く触れることすらなかった。 この小説の読後感は、おとぎばなしを読み終わったときの子ども時代のそれに似ている。 コメント(0)| Track back(0) | 2004-07-11 23:46:39 |
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